綿矢りさ「蹴りたい背中」
歴代最年少で芥川賞を受賞した綿谷りさの代表作「蹴りたい背中」をご紹介します。
「蹴りたい背中」の世界
人付き合いの嫌いな高校1年生の「ハツ」は常に冷めた目で同級生や先輩を見ています。
それがもとで疎外された理科の授業中、やはりクラスから疎外されていたアイドルオタクの「にな川」と、彼が熱心なファンであるファッションモデル「オリチャン」の話を通じて交流を持ち始めます。
「蹴りたい背中」というタイトルの妙
にな川が作ったオリチャンのアイコラを見つけたハツは、にな川を後ろから思い切り蹴り倒します。
そしてオリチャンのライブ後。「オリチャンを一番遠くに感じた」と呟いた、にな川が寝転がって向けた背中を蹴ろうとしたハツ。
にな川は背中に当たった足の指先に気付き、ハツは知らないふりをします。
ハツにとっては、自分と正対していない(=背中を向けている)事で安心できる相手のにな川でしたが、このシーンで「蹴る」ことを止めたハツと背中に触れる足先に気付いたにな川との関係は微妙に変化してゆくのでしょうか。
恋愛に至らない、微妙な感情を「蹴りたい背中」というキーワードで表現した綿矢りさの表現感覚と精緻な描写力は、非常に高い評価を得ました。