歴代の受賞作品

さまざまな文学賞の歴代の受賞作品の書評を行います。

ベストセラーとなった芥川賞作品:村上龍 『限りなく透明に近いブルー』

著者自らが本作のテーマを、近代化の達成という大目標を成し遂げた後に残る「喪失感」である、と語った作品です。
セックスとドラッグ、ロックンロールに明け暮れる若者たちを描いたこの作品は、芥川賞の選考の際に賛否がわかれ、選考委員の間で大変な議論となったそうです。
題材の相似から同じ芥川賞受賞作品、石原慎太郎『太陽の季節』と対比される事も多いようですが、どちらも「当世若者気質」モノとでも言うべきジャンルでしょうか。
これは芥川賞、いや全ての新人賞においての定番テーマなのかもしれません。

1976年の「当世若者気質」モノ

この作品から遡ること約20年、朝鮮戦争特需に沸き、高度経済成長を加速していった時代に石原慎太郎は『太陽の季節』で富裕層の無軌道な若者を描きました。
決して、当時の若者全てがそのようだったわけでもないのですが、富裕層の若者という、庶民にとって見ればリアリティとフィクションぎりぎりのモチーフ扱うことで、作品に映し出された時代を輪郭付けることに成功しているのではなかと思います。
さて、昭和50年代初頭に発表された 『限りなく透明に近いブルー』ですが、こちらは米軍基地の町、福生が舞台。
覚醒剤のLSDを用意に入手できる環境の若者たちがモチーフですね。これも庶民にとってはリアルとフィクションぎりぎりの線です。
こうした手法で時代を輪郭付ける作風は、話題性を獲得するのに有利なのではないかと思われますし、それ故新人賞作品に多いのかもしれません。

セックス描写の限界を攻める文芸

両作品ともに当時としては過激なセックス描写が話題になりました。
どちらも更に一歩踏み込めばポルノになるところを、表現技法の妙で回避している様にも思えます。
もっともこれはこの両作に限らず、大御所といえる作家の作品にもみられるものですが。
これも話題性を求めてのことでしょうか。
「文芸」、確かに「文」を使った「芸」であり、文芸作家もまた「芸人」なのかもしれません。

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